親の介護費用を、親の預金から支払うのは自然なことです。しかし、通帳やキャッシュカードを子どもが管理している場合、相続時にほかの親族から使い込みを疑われることがあります。親のための支出だと説明できる形で管理することが大切です。

親の預金管理は親族トラブルになりやすい

介護が進むと、親が自分で銀行に行けなくなることがあります。そのため、近くに住む子どもが通帳やキャッシュカードを預かり、介護費用や生活費を支払うケースがあります。

実際には親のために使っていても、ほかの親族から見るとお金の流れが見えません。相続が始まったあとに通帳を確認し、大きな現金引き出しがあると「何に使ったのか」と疑問を持たれることがあります。

疑われやすい支払い方

  • ATMでまとまった現金を引き出している
  • 領収書が残っていない
  • 親の口座から子どもの口座に送金している
  • 介護費用と家族の生活費が混ざっている
  • ほかの親族に支出状況を共有していない

このような状態が続くと、たとえ正当な支出でも説明に時間がかかります。相続時の不信感を避けるには、支払いの時点で記録を残すことが重要です。

親のための支払いは使途を明確にする

親の預金を使う場合は、何に使ったお金なのかを明確にしておきましょう。病院代、薬代、介護施設費、介護用品、食費、公共料金など、支出の種類ごとに領収書や明細を保管します。

可能であれば、現金払いよりも振込や口座振替、カード払いなど、履歴が残る方法を使うと説明しやすくなります。施設費や医療費など金額が大きいものは、通帳の記録と請求書をセットで残しておくと安心です。

現金を引き出すときはメモを残す

どうしても現金が必要な場合は、引き出した日、金額、目的をメモしておきます。たとえば「父の介護用品購入用」「母の通院タクシー代」「施設で使う日用品費」など、後から見て分かる言葉で残しましょう。

封筒に現金を分け、使った分のレシートを入れておく方法もあります。難しい会計処理ではなく、第三者が見ても分かる状態にしておくことが大切です。

親の意思確認も重要になる

親の判断能力が十分にあるうちは、介護費用をどの口座から支払うか、誰が通帳を管理するかを親本人と確認しておきましょう。親の意思をメモに残しておくだけでも、あとから説明しやすくなります。

親の判断能力が低下してから、子どもが独断で大きな支払いをすると、ほかの親族から疑われやすくなります。必要に応じて、成年後見制度などの利用を検討する場面もあります。

一人だけで抱え込まない

親の預金管理を一人で抱えると、責任も疑いも集中しやすくなります。兄弟姉妹がいる場合は、定期的に支出状況を共有しましょう。

月ごとに「施設費いくら、医療費いくら、日用品いくら」と簡単に共有するだけでも、透明性が高まります。親族全員に細かな許可を取る必要はありませんが、後から初めて知る状態は避けたいところです。

相続開始後は口座の扱いに注意する

親が亡くなると、金融機関が死亡の事実を把握した時点で預金口座の取引が制限されることがあります。葬儀費用や医療費の支払いが残っている場合、誰がどのように支払うかを事前に考えておくと慌てずに済みます。

相続開始後の預金は、遺産分割協議の対象になることがあります。勝手に引き出して使うと、ほかの相続人とのトラブルにつながる可能性があります。必要な支払いがある場合は、請求書や領収書を残し、相続人間で共有しておきましょう。

不動産がある場合は相続登記も関係する

親名義の不動産がある場合、預金だけでなく不動産の相続手続きも必要になります。相続登記は、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務化されています。

介護中から不動産の有無、権利証や登記関係書類の保管場所を確認しておくと、相続後の手続きが進めやすくなります。

支払い履歴を残すことが自分を守る

親の預金を介護費用に使うこと自体は珍しくありません。問題は、使途を説明できない状態で管理してしまうことです。

通帳、領収書、請求書、メモ、親族への共有記録を残しておけば、相続時に不必要な疑いを避けやすくなります。介護を担う人ほど、善意で動いたことを証明できるよう、日々のお金の流れを見える形にしておきましょう。

出典:法務省 相続登記の申請義務化について/法務省 不動産を相続した方へ