介護をしている人だけが抱えやすい負担

親の介護は、同居している人や近くに住む人に偏りやすいものです。病院への付き添い、薬の受け取り、ケアマネジャーとの連絡、介護用品の購入、緊急時の対応など、ひとつひとつは小さく見えても、積み重なると大きな負担になります。

遠方に住む兄弟姉妹から見ると、電話やメッセージで状況を聞くだけなので、実際にどれほど時間を使っているかが伝わりにくいことがあります。そのため、介護している側は「自分だけが動いているのに、口だけ出される」と感じやすくなります。

お金の負担は表に出にくい

介護では、介護保険サービスの自己負担だけでなく、通院時の交通費、日用品、食事、衣類、紙おむつ、病院の付き添い時の駐車場代など、細かな支出が発生します。親の財布から出しているつもりでも、急ぎの支払いを子どもが立て替える場面も少なくありません。

こうした支出は、領収書を残していなければ、あとから説明するのが難しくなります。相続の話し合いになったときに「本当にそんなに使ったのか」と疑われる原因にもなります。

口出しが相続トラブルにつながる理由

介護中の不満は、その場だけで終わらないことがあります。親が亡くなったあと、遺産分割の話し合いで「介護をした自分」と「介護に関わらなかった親族」の間に感情の差が出やすくなるためです。

介護した側は「自分の時間もお金も使った」と感じます。一方で、介護していない親族は「相続は法律どおりに分けるもの」と考えるかもしれません。この認識のズレが、兄弟姉妹間の対立を生みます。

介護したから自動的に相続分が増えるわけではない

介護をした事実があっても、それだけで当然に相続分が増えるとは限りません。相続の場面では、感情だけでなく、どのような負担をしたのか、親の財産を維持するためにどの程度貢献したのかなどを説明できる材料が重要になります。

そのため、介護中から支出や対応内容を記録しておくことが大切です。日付、内容、金額、誰が支払ったかを残しておくだけでも、あとから話し合うときの材料になります。